情報300 「阿弖流為Ⅱ」活用、ブラックホールの輪郭撮影に成功

5月12日、奥州市の国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)の研究者を含む国際チームは、地球が属する天の川銀河の中心にあるブラックホール「いて座Aスター」の輪郭を撮影したと発表した。
同チームは世界6カ所にある八つの電波望遠鏡を組み合わせて地球サイズの仮想望遠鏡を形成、約2万7千光年離れ、質量が太陽の400万倍ある「いて座Aスター」を2017年4月に観測、データを解析して画像化を進めていた。
2019年に世界で初めて別のブラックホール(M87銀河)の輪郭を撮影したと発表しており、2例目の成果。
今回の成果には水沢観測所の本間所長や秦和弘助教ほか、ゆかりの研究者も参加し画像化などに貢献、シュミレーションには同観測所のスーパーコンピューター・アテルイⅡが活用された。
〔『岩手日報』5月13日付〕

アテルイⅡは、幅9.6㍍、高さ2.2㍍、奥行き1.9メートルの大きさで、理論演算性能は天文学専用として世界一位のスーパーコンピューター。
家庭用パソコンの約2万倍の性能を持ち、物理法則を基にコンピューター内に宇宙を再現して研究を進める「シュミレーション天文学」の分野で活用されているという。
2018年6月から本格運用を開始したが、前身のスーパーコンピューター「アテルイ」(2013~2017年度運用)を継ぐことから「アテルイⅡ」と名づけられている。

ちなみに、運用開始を記念して奥州市文化会館で開催(2018年7月)された国立天文台講演会「アテルイと挑む未知の宇宙」の講演者と演題は、次のとおりであった。

小久保英一郎(国立天文台理論研究部教授/天文シュミレーションプロジェクト長)
「アテルイの観た宇宙」
田中雅臣(東北大学大学院理学研究科天文学専攻准教授)
「アテルイが解き明かす宇宙の元素の起源」
馬場淳一(国立天文台JASMINE検討室特任研究員)
「アテルイと最新観測が解き明かす天の川銀河の構造」