情報271 BS歴史館「不屈の英雄 アテルイ」

1月31日の午後8時から9時まで、NHKのBS歴史館で「不屈の英雄アテルイ~古代東北の底力~」が放送された。出演は渡辺真理の司会で、東北学院大学の熊谷公男教授、「アテルイ伝」原作者の高橋克彦氏、俳優の苅谷俊介氏で、佐々木蔵之介が語りを担当している。  番組紹介には、「1200年前、平安京を築いた桓武天皇が、どうしても打ち負かせなかった不屈のリーダーが東北にいた。その名はアテルイ!朝廷は20年にわたって大軍勢を送りこんだが、勝利をあげることはできなかった。アテルイたちが強かったのはなぜか?最新の発掘や研究から浮かび上がったのは、東北の自然の中で培った驚きの戦闘能力と、広大な交易ネットワークを操る知恵。そのリーダー、アテルイの実像に迫る!」とある。

番組では、各所に「アテルイ伝」の映像を流しながら、新野直吉秋田大学名誉教授をはじめ多くの東北古代史の研究者も登場し、様々な角度からアテルイと蝦夷の実像に迫っている。

まずアテルイ軍が強かった理由について、新野氏は、朝廷軍はそもそも徴兵された農民兵が主体だったことと、蝦夷が農耕に加え狩猟採集の暮らしをしていたことから日々に戦闘能力が磨かれていたことをあげる。熊谷教授は具体的に①弓(縄文以来の狩猟)、②馬(名馬の産地、弓との結合)、③稲作(長期の戦いを支えた)の三つをあげた。

アテルイの実像については、岩手大学の樋口知志教授が、「日上乃湊」の存在等からアテルイをある時期まで朝廷側にいて「貿易の現地管理者」の役割をしていたのではないかとし、「交易を担う人物」「ダイナミックな交易の中の経済人」という新たな人物像を描いてみせた。

アテルイの降伏については、新野氏が坂上田村麻呂を信頼しての「和睦」説を、今泉隆雄氏(東北歴史博物館館長)は蝦夷勢力の「内部崩壊」説を、高橋克彦氏は「アテルイは20年間無敗だった」として「偽装降伏」説を主張した。最後に熊谷教授は、「アテルイは東北の自立を守るために戦った。アテルイは地域の自立を考える原点だ」と語った。