情報158 単行本

[1]久慈力著『蝦夷・アテルイの戦い』(批評社2002.7) 前編が「エミシとは何か」、中編が「大和朝廷とは何か」で、後編が「アテルイの戦いとは何か」。その小見出しに、「アテルイは謀略によって拉致された」「桓武、田村麻呂、公家による騙し討ち」「百済亡命者の根拠地にアテルイは封殺された」と見えるように、田村麻呂の「善意」を信じないとし、「彼は国史の編纂者同様、老獪な渡来人である。」という認識に立つ。そして、「ヒタカミ大戦争はエミシ側の勝利」ということもできる、という。筆者は「むじくれ・天の邪鬼」を宣言。
[2]佐藤秀昭・文『アテルイ』(岩手日報社2002.7) 長編アニメ「アテルイ」のストーリーブック。映画を監修した佐藤秀昭氏(延暦八年の会代表)の文で、最初に歴史的背景を「アテルイが活躍したころ」として、わかりやすく説明している。A5判、百ページ、千二百円。
[3]中島かずき著『アテルイ』(論創社2002.8) 8月に新橋演舞場で上演された市川染五郎主演『アテルイ』の台本。「日の国若き時、其の東の夷に蝦夷あり。彼ら野に在りて、未だ王化に染はず。山を駆けること禽の如く、草を走ること獣の如し。かの長の名は阿弖流為。帝、これを悪路王と呼び、邪しき神姦しき鬼と怖れたり。」 この最初に掲げられた文章からして、的確な切り口からする展開の面白さを十分に予感させるし、実際にも期待を裏切らなかった。
[4]千葉周秋編著『エミシ・タムラマロ伝説』(自費出版2002.9) 前半にエミシと田村麻呂に関する東北各地の伝説302編、後半に岩手県内の寺社などに伝わるエミシ伝承を地域別にまとめた。A5判278P、2千円。