情報80 伊藤博幸「~蝦夷英雄時代~阿弖流為 」

宮城・秋田・岩手のタウン交流誌『すくらむぶる』第209号(1998.11~12)に「すくらむぶる偉人英雄伝 其の五 」として掲載されている。簡単に紹介すると、【1】七、八世紀にかけて蝦夷社会は急成長し安定した独自の社会を形成していた。【2】阿弖流為の村落では豊かな生産力を背景に戦士の専業化が進み、兵法もそれまでの蝦夷間抗争の経験から多くを学んで一定の発達をみせていた。【3】国家による蝦夷遠征問題に対して阿弖流為と母礼の村落は反国家の姿勢を明確にした。このような自立主義が抬頭するところに彼らの村落社会の真の成長が窺える。二人は各戦士団を代表する軍事首長でもあった。【4】蝦夷の命運を握って果敢に戦った阿弖流為と母礼、古代蝦夷の希望がひとえに二人が率いる蝦夷戦士に集約されたとき胆沢に英雄時代があった。【5】13年間の耐久戦の結果、
降伏することになったのはこれ以上戦い続けても蝦夷社会が破壊されるだけとの判断であろう。敗戦にもいろいろあり、むしろ敗戦の中から実を取る方法を選択したのである。