2023年3月 4日

情報301 胆江日日新聞 『探検!発見! まちアート』にアテルイ

「古代東北の英雄アテルイ(阿弖流為)」を取り上げ、「胆江地方では、今でもさまざまな場所でその面影を感じることができる」として写真入りで紹介している。

  1. 施設案内標識(下の方にアテルイの顔がある)
    水沢地区内の主要幹線道路に数多く設置されている施設案内標識。「何となく絵が描かれていることは分かっていても、じっと見る機会はなかなかないのではないだろうか。旧水沢市の花鳥木と馬に並んで、いかめしい表情の男性の顔が切り絵風に表現されている。文字による説明が無くても、一目でアテルイが連想できる見事な意匠だ。」
  2. 胆江地区内温泉施設のアテルイの肖像画を組み込んだ立て看板
    2001年に胆江地区温泉協議会が企画したもので、2002年のアテルイ没後1200年事業とタイアップして製作された。「くすんだ金色の輝きが、郷土を守るため、敢然と朝廷軍に挑んだ意思の強さを感じさせる。」
  3. 奥州市前沢生母柳沢地区内の玉石で描かれたアテルイの顔
    前沢を通る県道237号線沿いに、長さ約50㍍の石壁の2ケ所に、アテルイの顔がある。一辺が1.5㍍ほどで、白と黒の玉石で重厚な存在感がある。「突然目に入るため、通り掛かった際には思わず二度見してしまいそうだ。」
  4. 水沢東大通りの「アテルイの像」
    水沢常盤地区の一部は昔「跡呂井」と呼ばれており、その地名は「阿弖流為」に由来すると伝わって来た。その常盤通り沿いにあるアテルイ広場に縄文時代の「火炎土器」のイメージに重ねた高さ約6㍍、上部直径約3㍍のストリートシンボルとして1992年に設置された。「時の権力にあらがい続けたアテルイの怒りを表現しており、その視線は巣伏の戦いの跡に向けられている。」
  5. 水沢花園町の「胆沢の合戦」パノラマ
    アテルイ広場の北東、花園ポケットパークには巣伏の戦いを題材にした「胆沢の合戦」と題する大きなパノラマが設置されている。縦3㍍、幅5.5㍍の鉄骨コンクリート造りで、銅板ぶきの屋根で仕上げられた立派なもの。挿絵画家中一弥さんの原画をもとに、馬上で指揮を執るアテルイの姿をクローズアップ、勇敢な蝦夷軍が朝廷軍を北上川に追い落とす場面を描いている。1980年に河北新報社の寄贈を受け常盤公民館前庭に設置していたが、都市計画事業推進のため1998年に現在地に移設、大パノラマとして再現した。
  6. アテルイの田んぼアート
    「巣伏の戦いがあったとされる水沢佐倉河北田地内には物見やぐらが建てられている。そこから「田んぼアート」を眺めるのも楽しい。2008年の題材は金色堂とアテルイの顔だった。」
  7. 史跡を案内するアテルイのイメージキャラクター
    巣伏の戦いとして伝わっている戦跡への案内標識。そこには「鋭いまなざしが特徴的な絵が添えられている。これは、2001年に作られたアテルイのイメージキャクター。アテルイ没後1200年記念事業を盛り上げるため全国から募り、応募作品161点の中から選定された。オレンジと黒を基調にし、目とひげを際立たせた斬新なデザイン。シンプルな中にも力強さがあり、英雄にふさわしい威厳と風格を備えている。」【『胆江日日新聞』5月3日、17日、6月7日】

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2023年3月 4日

情報300 「阿弖流為Ⅱ」活用、ブラックホールの輪郭撮影に成功

5月12日、奥州市の国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)の研究者を含む国際チームは、地球が属する天の川銀河の中心にあるブラックホール「いて座Aスター」の輪郭を撮影したと発表した。
同チームは世界6カ所にある八つの電波望遠鏡を組み合わせて地球サイズの仮想望遠鏡を形成、約2万7千光年離れ、質量が太陽の400万倍ある「いて座Aスター」を2017年4月に観測、データを解析して画像化を進めていた。
2019年に世界で初めて別のブラックホール(M87銀河)の輪郭を撮影したと発表しており、2例目の成果。
今回の成果には水沢観測所の本間所長や秦和弘助教ほか、ゆかりの研究者も参加し画像化などに貢献、シュミレーションには同観測所のスーパーコンピューター・アテルイⅡが活用された。
〔『岩手日報』5月13日付〕

アテルイⅡは、幅9.6㍍、高さ2.2㍍、奥行き1.9メートルの大きさで、理論演算性能は天文学専用として世界一位のスーパーコンピューター。
家庭用パソコンの約2万倍の性能を持ち、物理法則を基にコンピューター内に宇宙を再現して研究を進める「シュミレーション天文学」の分野で活用されているという。
2018年6月から本格運用を開始したが、前身のスーパーコンピューター「アテルイ」(2013~2017年度運用)を継ぐことから「アテルイⅡ」と名づけられている。

ちなみに、運用開始を記念して奥州市文化会館で開催(2018年7月)された国立天文台講演会「アテルイと挑む未知の宇宙」の講演者と演題は、次のとおりであった。

小久保英一郎(国立天文台理論研究部教授/天文シュミレーションプロジェクト長)
「アテルイの観た宇宙」
田中雅臣(東北大学大学院理学研究科天文学専攻准教授)
「アテルイが解き明かす宇宙の元素の起源」
馬場淳一(国立天文台JASMINE検討室特任研究員)
「アテルイと最新観測が解き明かす天の川銀河の構造」

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2023年3月 4日

情報299 声優朗読劇「フォアレーゼン~阿弖流為~」が中止

本年2月12日(土)に奥州市文化会館大ホールで開催されるはずであった奥州市文化振興財団主催、ティーエーエヌジー企画制作の声優朗読劇「フォアレーゼン~阿弖流為~」が新型コロナウイルス感染症拡大により中止となった。
一昨年8月22日の開催が中止となり、あらためて昨年8月29日(日)に開催することで準備もすすんでいたが本年2月に延期になり、これも開催できず中止となった。

本公演に関して簡単に紹介すると、「蝦夷の英雄・阿弖流為の物語」を人気声優とクラシック音楽のコラボで紡ぐもので、「フォアレーゼン」とは、ドイツ語で読み聞かせの意味がある。
作家の中野順哉さんの脚本で、地元岩手県出身の汐谷文康さんのほか、石谷春貴さん、葉山翔太さんの3人の若手人気声優が出演、雨林美由紀さんのフルート演奏(8月29日の予定では森めぐみさんのピアノと星川萌惠さんのバイオリンの演奏)と共に、アテルイの生きざまを描くというものだった。

本年度内に再々度事業を組むのはむずかしくても、せっかくの公演をぜひ実現してほしいと願う。

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2023年3月 4日

情報298 おおぎやなぎちか作『アテルイ』の感想文

第54回岩手読書感想文コンクール小学校の部高学年(5、6年)の優秀賞に盛岡本宮小学校5年菊池展拓君の「生き続ける「心」」[課題図書=アテルイ 坂上田村麻呂と交えたエミシの勇士]が選ばれた。
以下、『岩手日報』紙に掲載された紙面から紹介する。

ぼう頭で、ぼくは目をうたがった。父とは子を守り、子を愛する者だと思っていた。
しかし、どうだろう。アテルイの父であるカンガは子であるアテルイを、さけびののしりにくんでいる。
いくら母が死んだとはいえ、そこまでするものなのだろうか。アテルイの心の中に生まれた「そいつ」が何かのかぎをにぎっているのかもしれないと、ぼくは仮定した。

「そいつ」は色々な場面ですがたを見せた。
たとえば、つる丸と出会った場面。
晴れていた天気が黒雲に変わったとき、まるで「そいつ」のような不気味さを感じた。
またあるときは、父をにくもうぞと、「そいつ」の声が多賀城の板張りの一室で聞こえてきた。
そしてアザマロのしゅうげきを受けたイサ村で父であるカンガにさい会したときにもやはり「そいつ」は現れ、にくめとアテルイをあおり、苦つうをよみがえらせた。

「そいつ」はいつもアテルイの心が弱っているときをねらってすがたを見せているように感じた。
「そいつ」とは何なのだろうか。弱いのか、強いのか。

ふと、思い出したことがある。ぼくも「そいつ」に会ったことがあるような気がする。
たとえば、宿題をサボりたくなったとき、またあるときは、半紙と筆を相手に、ただ独りで向き合っているとき。
そして、妹と兄妹げんかをしたときにもやはり「そいつ」に会ったような気がする。
ぼくの心が折れたときだ。

アテルイの前に現れる「そいつ」と、ぼくが会ったかもしれない「そいつ」は、同じではないのかもしれないが、心が弱ったときにすがたを現すという点では、共通していると思う。
つまり「そいつ」とは、心の弱さのごん化なのかもしれない。
ごん化の意味を辞典で調べたとき、予想が確信に変わった。

アテルイはずっと、だれかと戦ってきた。父であるカンガであったり、朝てい軍やその大しょう坂上田村麻呂もアテルイのてきだった。
いや、そう思っていた。
しかし、アテルイは言った。
「それらはまことのてきではない」「おれのてきはずっと『そいつ』だったんだ」。

人はみな、心をもっている。強い心、弱い心、じゃ悪な心、やさしい心。
「そいつ」は、そんな心のすきをねらって息をひそめている。
アテルイは、「そいつ」に心を乗っとられかけたが、強い心で立ち向かった。
そしていつもだれかが助けてくれた。
アテルイは、しょけいされその命を終える最後まで自分の心を守り続けることができたのだとぼくは思う。

アテルイがもし生きていたら、ぼくは聞いてみたい。
どうすれば心を強く生きられるのか、「そいつ」に打ち勝てるのかを。
カンガはきっと「そいつ」に負けたのだ。ぼくも負けそうなときがある。
そんなときは本を開き、アテルイに会いに行こうと思う。

審査委員長は、優秀賞は英雄アテルイの内面の弱さを「そいつ」という独自の表現で書き、読み応えがありました。と講評している。

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