情報282 シネマ歌舞伎「阿弖流為」全国上映

昨年7月に新橋演舞場で上演された歌舞伎NEXT『阿弖流為』が、シネマ歌舞伎第24弾作品「歌舞伎NEXT阿弖流為」として、北海道から鹿児島まで全国57の映画館で一斉公開(6月25日)された。

主役の市川染五郎さんはJR東日本の『大人の休日倶楽部』6月号の表紙を飾って、アテルイについて熱く語っている。
「昨年、『阿弖流為』という新作歌舞伎を上演しました。今では北の民・蝦夷の英雄として広く知られるアテルイですが、僕が目を付けたころは「誰?」という存在でした。初めて知ったのは、少年時代に読んだ学習漫画の短いくだり。征夷大将軍の坂上田村麻呂がアテルイの処刑を知り、敵将であるにもかかわらず涙したという逸話に、二人の間には敵同士以上の何かがあったに違いない。そう想像した途端、二人が両花道で向かい合う姿が浮かびました。これは面白い歌舞伎になる!と。そうやって温めていたネタは、平成14年、「劇団☆新感線」とのコラボレーション企画『アテルイ』で実現。それから13年後、歌舞伎として『阿弖流為』を上演することができました。歌舞伎作品とするにあたり、昨年、再び岩手を訪ねました。厳美渓、達谷窟毘沙門堂...。前と同じ所を巡ったはずですが、感じたことが違いました。厳美渓の流れが、そのまま一幅の絵になりそうな"青"であることに気付いたのです。そして遠くに広がる森と空。それを目にしたとき、アテルイの「この森を守るため、この里を守るために戦うのだ」というせりふが、心底実感できました。北上川を挟んで向き合う朝廷軍と蝦夷。やつらの侵略を許すことは、この美しい自然が汚されること。それは絶対に許せない。だからアテルイたちは、全てを懸けて戦ったのだと、あの光景が教えてくれました」。このほか染五郎さんは、『AERA(アエラ)』など50冊を超える雑誌への登場、ラジオ、テレビなどメディアへの数多くの出演など、驚くばかりの力の入れ方を見せている。
このシネマ歌舞伎「阿弖流為」、どれくらいの人が観ることになるのだろうか。

5月15日、岩手県奥州市では胆江日日新聞創刊70周年記念事業として、地元先行上映会を市文化会館大ホールで開催、来場者1400人余りを感動と興奮で包み込んだ。
染五郎さんのトークライブも行われた。アテルイ第三のブームが到来しつつあるように思える。