情報253 及川洵『阿弖流為と田村麻呂伝説』

 当会会長でもある及川洵氏が、一昨年に小説『阿弖流為』を出版したのに続き、今回は伝説をまとめた。第一章 蝦夷とはなにか、第二章 蝦夷と国家の対立、第三章 各地に残る伝説、第四章 奥浄瑠璃『田村三代記』を読む、第五章 田村麻呂と討たれた者たち、からなる。著者は「あとがき」で、田村麻呂の伝説は多く取捨選択に苦労するほどであったが、阿弖流為と母禮には伝説がほとんどなく、蒐集できなかったので、考古学の情報や周辺の事情から二人に迫ろうとした。と述べている。第一章の五に、阿弖流為は何を食べたか。第二章の二に、阿弖流為・母禮の降伏と処刑。四に、伝アテルイ砦の調査。第三章の二に、阿弖流為・母禮の伝説。の項目がある。最後に、「田村麻呂はその薨伝や伝説、多数の関連寺社から確かに偉大な人物であったといえる。その田村麻呂と二度にわたり戈を交えた阿弖流為と母禮をどう評価すべきなのだろうか。朝廷の野望を挫こうとした蝦夷の英雄と考えるべきか、それとも胆沢の人々に対し戦いの苦痛を与えた無謀な領袖と見るべきなのか、判断は読者に委ねたい。」と結んでいる。〔胆江日日新聞社、2011年5月発行、1,600円〕