情報176 青森ねぶたに阿弖流為

 青森のねぶた祭りに「阿弖流為」のねぶたが登場した。千葉作龍作の「北の炎・阿弖流為」で、サンロード青森の製作。何年か前には「悪路王」のねぶたがあったと思うが、アテルイは初めての出陣。平成16年8月2日の『読売新聞』一面の「編集手帳」がそのことを取り上げている。全文を紹介する。
 青森市出身の版画家棟方志功が「世界一の火祭り」と評した青森ねぶた祭が今日から始まる。歴史や神話を題材にした人形型の大灯ろうに明かりをともし、市内を練り歩く。
◆太鼓や笛の勇壮な囃子に合わせ、何万人ものハネト(踊り手)がラッセラーと叫んで飛びはねる。浴衣とたすきのハネト衣装で踊っていた作家の中上健次さんに感想を聞いたのは二十年近く前のねぶた祭の夜だった。
◆「自由で単純で開放的で。これは縄文の祭りに違いない」。出身地の和歌山県新宮市の御燈祭に通い合うところがあるとも語っていた。今年は、その縄文文化を継承した東北の原住民である蝦夷の一首長、阿弖流為を描いたねぶたが登場する。
◆胆沢地方(現在の岩手県水沢市)を本拠地とした阿弖流為は、大和朝廷の北進に激しく抵抗したが、八0二年、征夷大将軍の坂上田村麻呂に降伏、処刑される。水沢市出身の衆院議員の小沢一郎さんは演説で時折この故事に触れ、「被支配者から見れば歴史は一変する」と説く。
◆阿弖流為は今も東北人の誇りなのだろう。ねぶたは、田村麻呂が蝦夷征伐の際に用いた戦術だったという説がある。今回は、この敵将にちなんだねぶたも運行される。東北人は懐が深い。
◆千二百年の時を超えて両雄相まみえ、漆黒の空を焦がす。縄文の鼓動が響いてきそうだ。