情報129 『東北学』4号(作品社)

 東北芸術工科大学東北文化研究センターの発行(1999年10月創刊)。本号の特集は南北論の視座で、責任編集者赤坂憲雄氏の工藤雅樹福島大学教授へのインタビュー「蝦夷の古代史」が掲載されている。工藤氏の古代蝦夷の社会は部族制社会、英雄時代でもあるという説に関連して、赤坂氏は「ピエール・クラストルというフランスの人類学者が『国家に抗する社会』という本の中で、富が蓄積され権力が生まれ、やがて族長が王に転化して国家ができるというマルクス主義的な歴史発展説に対して、部族社会の族長と国家を支配する王との間には大きな裂け目があると論じています。むしろ部族制社会のある段階には、国家や王という異質な権力を生むことに抵抗する社会の状態が見られるといいます。工藤さんは時に、古代蝦夷の社会を「国家を作ることを挫折させられた」という表現を使われていますが、それはひょっとしたら国家や王という権力を拒んだ社会なのかもしれませんね。」