2015年9月16日

情報281 歌舞伎『阿弖流為』

歌舞伎NEXT『阿弖流為』が七月五日を初日に二十七日まで新橋演舞場で上演された。
アテルイ没後1200年にあたる平成14年に、市川染五郎主演により同じ新橋演舞場で上演した劇団☆新感線の『アテルイ』を歌舞伎として再創造したもので、タイトルにある「歌舞伎NEXT」にふさわしく新しい歌舞伎に挑戦する意欲溢れる舞台となった。
阿弖流為役の市川染五郎、坂上田村麻呂役の中村勘九郎、(たて)烏帽子(えぼし)鈴鹿(すずか)の二役の中村七之助に加えて、坂東彌十郎、市村萬次郎、片岡亀蔵、澤村宗之助、市村橘太郎、中村鶴松、大谷廣太郎、坂東新悟らの錚々たる面々が重要な役どころを演ずるという豪華な配役である。

脚本は13年前の『アテルイ』と同じく劇団☆新感線の中島かずき。
物語としては前回作の<(みかど)-大和(やまと)-田村麻呂>に対する<荒覇吐(あらはばき)の神-蝦夷(えみし)-アテルイ>という対決構図を基本とした展開から、今回は田村麻呂が<大和>に殺されかかり、阿弖流為は<蝦夷>が奉じる荒覇吐の神とも戦うという、複雑な展開となっている。
立烏帽子は実は荒覇吐の神で、「人が作った神を奉じるお前たち大和が、この日の国に息づく八百万の神の息の根を絶つ。それがこの戦の正体ではないか。だから私は阿弖流為を新たな(いくさ)(がみ)として呼び戻した。」と語り、阿弖流為は「......それは神の都合だ。」と言い放つ。
なかなか深い話にもなっている。

場内で販売していた『プログラム』に、当会が提供した「アテルイのイメージ肖像」と清水寺に建立した「阿弖流為・母禮之碑」の写真が掲載されている。
なお大阪公演は十月三日から十七日まで大阪松竹座で。

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